てりり◎物語、梗概集

てりり◎物語、梗概集

筋、道理。重層世界の諸要素。ナラトロジー

風 第二稿

幸いなことに僕の家は炎に燃やし尽くされ、僕を除いて生き残った者は無かった。 僕は裏山の空き地に腰を下ろし、しげしげと星空を眺め、うたた寝を楽しんだ。過ごしやすい気候の夜だったけれど、生憎、家が煤になるほどだった火事の熱さを思い出し、肌は熱に…

僕「ねえ、君の望みは何なのかな、僕では力になれない?」 スワン「わたしは望みを自分でかなえてる最中だし、 だけど私の望みに必要な事で私には出来ないこともある、 それは出来る人にお願いしてやってもらう事だけど。 あなたは私が必要としてる事を行う…

美しき愛の永遠

朝焼けに輝く海辺に手と手を取り合いながら佇む美少年と美少女、カリンとマロン。 カリン「美しい朝だね」 マロン「本当に」 カリン「こんな美しい光の中で君といられるなんて僕は幸せだ」 マロン「わたしも」 二人は美しい世界を感じながら永遠にも等しい時…

オタサーの姫 サークラ舞い散る春

プロローグ 「わたしの好きなあの人は、漫画サークルに入ってしまった。だからわたしも入ったの、漫画研究会に」 タイトル「オタサーの姫 サークラ舞い散る春」 大好きなあの人が入った漫画サークルはここね、漫画研究会っと…… 「しゅんくーん! わたしだよ…

お金少女

お金がたくさんありました。きれいな女の人に全額投資。お金は持ち逃げされて悲しかった。。けれどむしろスッキリして新たな活力が湧いてきた。それで夢を叶えられたし、あの人はお金を増やして帰ってきた。僕達は結婚して幸せに暮らした。本当に良かった。…

季節の変わり目に彩りを求めて旅へ出た私は一面の紅葉の中を一人歩いている。行けども行けども世界は赤茶けてまるで視界が開けない。もう半日は歩いただろう疲れに歩みを止め座り込み胡座の上に頬杖ついてうつらうつらと瞬きする。もうこのまま此処で眠り眠…

そうして僕は、サラダを食べる

しんどい気持ちに蹴りを入れて馬車馬のように走りたい。痛みの刺激で脳は活性化し光の速さで家へと帰る。もうだめだ今日は疲れた。死んでしまおう死という名の眠りにつこう。そして僕は布団に入り眠る。これが死だ。死んだ僕は夢をみる。夢はいつでもどこで…

落書き

天才と名高い画家の落書き、それはアイデア帳に挟まれていたもので今後のモチーフになる萌芽を感じさせるものではあったが、けれど今のところその絵が精緻に描かれた事は無い。 ふと、手にとったものにそれが挟まれていて少女は感銘を受ける。このテーマは過…

尊び

誰も何も解らないし察知する事もできない、人の命の価値と他者の価値との釣り合いが取れない、生きる意味もわからない。誰にも何も解らないし尊ばれる価値など無い 居た堪れない気持ち、行く手を遮る男を八つ裂きにして狂い、泣きたい、泣きたい、どうしよう…

僕が見回りしていると、

僕が見回りしていると、遊んでくれると思った子供たちが微笑みかけてきて、いつものような楽しみをくださいな、って顔してこっちに寄ってくる。でも僕にそんなことなんでとてもしてあげられないな、なんて、そんな気持ちになって申し訳なくて、だからみんな…

眠る獅子の静寂

唇から零れ落ちる安息と共に流れる煌めきの安寧、それは奇蹟。獅子は闘いの化身の座を下りて、静寂の時を過ごしていた。 彼は既に全てを極め尽くしていた。祭り上げられる役割から解放されることを選んだ今、彼の魂は輝ける黄金の色を落とし、穏やかな暖かみ…

天才ミュージシャン

天才ミュージシャン いつだって輝かしい音楽を創り続けてきた彼は、ついに力尽きて死んだ。後に続く多くの天才たちに絶大な影響を遺して。 彼の音楽は常に革新的で、かつ伝統的な在り方を的確に踏襲したものだった。 彼の存在意義は社会の在り方を問い、より…

壊れ続ける

草花を愛す少年がいて、人の為に生きている事を当然だと思っていたのだけれど、彼の常識はこの世界では通じなくて、ただ彼は否応なくこの世界からの拒絶を受け入れ続けては壊れていった。 彼には誰も味方がいなかったので、彼はいつまでも瓦解していく自我を…

少女蝸牛

※小さな女の子の話 庭で見かけたカタツムリ、今はわたしの部屋で這いずってる。畳の上をぬめぬめとくねりながら、なんだかきれいにきもちわるい。 このカタツムリをポケットに入れて、学校に歩き出す。クラスメートにみせびらかして、このカタツムリ太郎をみ…

魂の世界

僕は人に死を与えたい。人に生きる意味など無いし、また価値も無い。人の世の苦を駆逐する為に、全ての人に悦楽の死を齎したい。須らくこの世の為になる有意義な死を以って、あらゆる魂に報いを与えたい。だから僕は人を死なせる。どんどんどんどん、どんど…

美獄物語

極端に人気の高い違法な内容の物語を書かせ闇ルートで流布し利益を得る闇の商売をする男が、作家を誘拐監禁管理し能力の全てを絞り出させ新たな激烈に売れるジャンルの作品を書かせる。規制の網をかいくぐる闇の同人イベントに来訪した高貴な少女はその物語…

殺害せよ、狙うはターゲット

恨みを抱くストーカー気質な殺し屋の女と、人を人とも思わない身勝手で有能でサイコパスなスーパーヒーローの男。二人はその特質からいつまでも関わり合う事になる。女は男を付け狙うが、男は意に介さず、気付きもせず、生まれ持った有能さで次々と危機を回…

死を

月の光に含まれる毒が、人を狂わす。光を浴びた人々は、他の人々を死なせてゆく。生存者達は隠れ、戦い始める。が、月の咎人は常に勝ち続け、人々を駆逐し死滅させ、ついに彼らは皆滅ぶ。世界には人以外の存在だけが生き残る。穏やかで暖かい、本来あるべき…

宝石

輝く欠片を齧って、僕ら兄妹は飢えを凌いでいた。それはとても食べられそうにない物だったが、それでも口に頬張って、飲み下してしまいさえすれば、お腹は膨れる。食べ物は無くても、それだけはたくさん有った。僕達はとにかくそうやって、耐え続けた。 やが…

歩いて革命

国家元首の元へ、僕は歩き出した。一歩一歩、確実に、彼の元ににじり寄る。一歩、また一歩、着実に僕は歩み寄る。 彼に謁見し、もう国民から必要とされていない彼に、その運命を宣告する、革命の為に。 一歩、また一歩、僕は歩き出す。地球を一周した先に待…

驚かされて

彼女は僕を驚かしてばかりいて、いつもそれで僕はドキドキしてしまうのだけれど、それがあるとき治まらなくて、僕は心臓発作で死んでしまった。 その時だけだよ、僕のほうが彼女の事を驚かす事ができたのは。

僕の好きな映画

僕の好きな映画 ブライアン・デ・パルマの映画をみるようになったのが何故だったのか思い出すのは難しいのだけれど、幼少期にヒッチコックの映画を祖母に見させられていた影響がとても大きかった気がする。「鳥」を執拗に何度も見せられ、人間が何をどうしよ…

懊悩

どうしたらいいんだろう、誰も僕のことを理解してくれる事なんて無いし、とても憂鬱。その闇色の虹は響きあう鐘の音のようにカランコロン調和して僕の心を侵蝕する。不可侵の城壁はいとも容易く壊れてしまって、僕の中の暗黒は外に伝播する。僕を許してくれ…

花は咲くだろう

少年がさまよって力を手に入れて破壊活動に従事した挙句、幼い日に大切に思っていた子を手にかけてしまい、自分自身に絶望し嗚咽を漏らしながら滝から身を投げる。そういう事ってあるよね。僕の知っている人の中にも、そういう種類の人間の屑が幾人もいて、…

王の墓

王の城にたどり着いた僕達一行は、姫を妃に貰い受ける旨王に宣告し、籠に乗せて走り去った。泣き叫び飛び降りようとする姫を引き留め、連れ去った。僕は姫を妃とし、僕を初代皇帝とする帝国を築いた。 幾年か後、姫を連れてあの城に戻ってみた。朽ち果てた城…

まったく嫌んなっちゃうな

ああ、まったく嫌んなっちゃうな、誰彼問わずどうにでもなれと思っちゃうよなこんな日に、なんで僕は徒党を組んでたむろしているのか、こんな日差しの中を。僕の頭の中に仕掛けられた時限爆弾を破裂させてメタモルフォーゼさせたいんだ、君に送るために木っ…

新しい空間

目に見えている青色の空が裂けて紅色の空間が入り込んできた。紅色の空間からは見たこともない異様な存在が湧いて出て、僕達を食べだした。僕達は皆で一斉に彼らを倒し始めたのだけれど、倒しても倒しても彼らは紅色の空間から生まれ出て、一人また一人と僕…

世界を壊す僕の果て

僕達の世界を手放すことに異論のあるものは多かった。祖先が築きあげた砂上の楼閣全てを手放す事に納得出来ない者がいるのは当然だろうし、またその先を見たいと願う気持ちも解らなくはない。けれど僕達の世界そのものが病巣であり、全てをチャラにして一か…

僕の幽霊

血まみれの部屋で目が覚めた僕は猫と一緒に旅に出た。 血まみれの男たちが現れ、僕の猫を返せと騒ぎ立てる。だから僕は懲らしめてやったのだ。100万回の死を彼らに与えて。 過ぎ去った嫌な思い出はなるべく早く忘れようとてくてく歩いていくと、猫が女の…

そうすれば僕だってきっと

一生懸命生きているけれど、誰にも何も評価されなくて、いつもどうにもやるせなくて倒れこんで泣き叫んで力尽きるまで蠢いて、疲れて眠って、それでも目が覚めて、また代わり映えのしない愚かな毎日を送らなくてはならないって気がついた僕は、どうにも涙が…