てりり◎物語、梗概集

てりり◎物語、梗概集

筋、道理。重層世界の諸要素。ナラトロジー

小説

風 第二稿

幸いなことに僕の家は炎に燃やし尽くされ、僕を除いて生き残った者は無かった。 僕は裏山の空き地に腰を下ろし、しげしげと星空を眺め、うたた寝を楽しんだ。過ごしやすい気候の夜だったけれど、生憎、家が煤になるほどだった火事の熱さを思い出し、肌は熱に…

宝石

輝く欠片を齧って、僕ら兄妹は飢えを凌いでいた。それはとても食べられそうにない物だったが、それでも口に頬張って、飲み下してしまいさえすれば、お腹は膨れる。食べ物は無くても、それだけはたくさん有った。僕達はとにかくそうやって、耐え続けた。 やが…

歩いて革命

国家元首の元へ、僕は歩き出した。一歩一歩、確実に、彼の元ににじり寄る。一歩、また一歩、着実に僕は歩み寄る。 彼に謁見し、もう国民から必要とされていない彼に、その運命を宣告する、革命の為に。 一歩、また一歩、僕は歩き出す。地球を一周した先に待…

驚かされて

彼女は僕を驚かしてばかりいて、いつもそれで僕はドキドキしてしまうのだけれど、それがあるとき治まらなくて、僕は心臓発作で死んでしまった。 その時だけだよ、僕のほうが彼女の事を驚かす事ができたのは。

指先の痺れの果ての悦楽

第一章 雪の中に横たわる人を発見した時、僕は何を思い出したのかというと、それはただもう死んでいるに違いないということであって、それは同時にそこにいるのがもう生きている存在などではなくて、「死体」なのだろうということであって、それはつまり「物…