てりり◎物語、梗概集

てりり◎物語、梗概集

筋、道理。重層世界の諸要素。ナラトロジー

美しき愛の永遠

朝焼けに輝く海辺に手と手を取り合いながら佇む美少年と美少女、カリンとマロン。

カリン「美しい朝だね」
マロン「本当に」
カリン「こんな美しい光の中で君といられるなんて僕は幸せだ」
マロン「わたしも」
二人は美しい世界を感じながら永遠にも等しい時間を過ごしている。しかしそれは仮初の姿、二人は敵国の王子と姫なのだ。
カリン「僕達の不安もこの美しさに溶けてしまえばいいのに」
マロン「好きよ、あなた」
カリン「僕もだよ」

結ばれる二人。けれどそれが二人の交わした最後の愛だった。


カリンが目覚めた時、マロンはいなかった。姫でありながら軍師でもあるマロンは、カリンの国の軍隊を罠にかけるため戻ったのだろう。カリンもまた王子そして将軍としてマロンの軍を打ち破らねばならない。戦況は苛烈を極めていった。

カリン「マロン、僕の声が聴こえるか」
マロン「ええ、あなた」
カリン「今、君の刃が僕の胸を突き刺し、僕の槍は君の胸を貫いた。僕は君を迎えるために必要な国を守るため君を失い、僕もまた失われる」
マロン「私の愛はあなたの命をも奪えた、私の命もあなたに奪われる、私の望みは永遠に満たされたの」
カリン「そうか、そうだな、僕も君に奪われたのだ、それならば本望だ」

二人は互いに抱き寄せるような姿態のまま動かなくなり、息絶えた。
王国は共に滅び、混沌の憂闇が訪れた。あの王国の美しかった世界は、もう二度と戻る事は無かった。