てりり◎物語、梗概集

てりり◎物語、梗概集

筋、道理。重層世界の諸要素。ナラトロジー

胸の早鐘、ギュッて、ギュッて

未来の事が書いてある手紙。「君たちは忘れてるかもしれないから書きます。あなたの妹は、明日の◯◯時に心臓の鼓動が止まって亡くなります。それまでの貴重な時間、大切に過ごしてください」
「なにこれ」、妹も一緒に見るけど、冗談だと二人とも本気にしない。キョトン「だってあたし健康よ」笑いあう。
僕達はもう忘れてる。


バス
家族たちも乗ってる
妹の様子がおかしい、心臓の鼓動が無くなっちゃう
妹の意識が無い
息が荒い
呼びかける
応えない
あの手紙の事を思い出す
あの話は本当だったんだ
妹が死んじゃう、家族たちに話す
本気にしてくれない
笑い事じゃないんだ、一笑に付される
小さい妹の体を抱き抱える
抱きしめる
息が絶える
鼓動が無くなってる
叫ぶ
母親も妹の胸に触れる
鼓動が止まってる
もういい、僕が連れて行く、病院に行くから止めて
バス、止まれない、
なんで止まらないんだ!
走りだしていて止まれない
反対車線に突っ込む、
避ける、避ける、
ポカンとし上手く反応できない人たちのとろい顔が見える


ギュッギュッて、抱きしめる、強く強く抱きしめる、ギュッて、ギュッて、
昨日の手紙を読んだ時に流れこんできたイメージが浮かぶ
「妹が、心臓の鼓動が無くなって、そのまま死んでしまう、消えてしまう、終わってしまう」
そうなる運命だった事を悟る、それが事実だと、それを僕は知っていたと、
そう思えば思うほど、ますます強く、速く、ギュッて、ギュッて、妹を抱きしめる
嫌だ、嫌だ、ギュッて、ギュッて、
「ドクン」
抱きしめられている妹の体が影のように見えその中に血の流れが赤い光のように浮かび上がり心臓と共にドクンと動き出すのが見える、その体の後ろから白い閃光が発し、世界の白と黒が全て反転し、体が輝く
すると妹の口から空気が漏れ、吸い込まれ、胸は上下し、体に温かみが戻ってくる
息を吹き返した!
わー、歓声


あの手紙は、天の国の◯◯からの贈り物だったんだね、
あれを知らせておいてくれたおかげで、妹が死んでしまう運命を思い出す事ができた
僕達は知っていたんだ
妹が死んでしまう運命を僕達は経験していた、そしてその運命を繰り返した
分かっていたはずなのに、知っていたのに
でも忘れていた
僕達はみんな未来を経験してる
未来を覚えてる
それを思い出す事ができる人たちは
もっと良い結果を、掴み取れるんだ


目を開けた妹と見つめあい、「もう大丈夫だぞ」「うん」
バスは病院へ向かう、
立ち昇ってきた、太陽の元にある、あの病院へ