てりり◎物語、梗概集

てりり◎物語、梗概集

筋、道理。重層世界の諸要素。ナラトロジー

2013-01-01から1年間の記事一覧

宝石

輝く欠片を齧って、僕ら兄妹は飢えを凌いでいた。それはとても食べられそうにない物だったが、それでも口に頬張って、飲み下してしまいさえすれば、お腹は膨れる。食べ物は無くても、それだけはたくさん有った。僕達はとにかくそうやって、耐え続けた。 やが…

歩いて革命

国家元首の元へ、僕は歩き出した。一歩一歩、確実に、彼の元ににじり寄る。一歩、また一歩、着実に僕は歩み寄る。 彼に謁見し、もう国民から必要とされていない彼に、その運命を宣告する、革命の為に。 一歩、また一歩、僕は歩き出す。地球を一周した先に待…

驚かされて

彼女は僕を驚かしてばかりいて、いつもそれで僕はドキドキしてしまうのだけれど、それがあるとき治まらなくて、僕は心臓発作で死んでしまった。 その時だけだよ、僕のほうが彼女の事を驚かす事ができたのは。

僕の好きな映画

僕の好きな映画 ブライアン・デ・パルマの映画をみるようになったのが何故だったのか思い出すのは難しいのだけれど、幼少期にヒッチコックの映画を祖母に見させられていた影響がとても大きかった気がする。「鳥」を執拗に何度も見せられ、人間が何をどうしよ…

懊悩

どうしたらいいんだろう、誰も僕のことを理解してくれる事なんて無いし、とても憂鬱。その闇色の虹は響きあう鐘の音のようにカランコロン調和して僕の心を侵蝕する。不可侵の城壁はいとも容易く壊れてしまって、僕の中の暗黒は外に伝播する。僕を許してくれ…

花は咲くだろう

少年がさまよって力を手に入れて破壊活動に従事した挙句、幼い日に大切に思っていた子を手にかけてしまい、自分自身に絶望し嗚咽を漏らしながら滝から身を投げる。そういう事ってあるよね。僕の知っている人の中にも、そういう種類の人間の屑が幾人もいて、…

王の墓

王の城にたどり着いた僕達一行は、姫を妃に貰い受ける旨王に宣告し、籠に乗せて走り去った。泣き叫び飛び降りようとする姫を引き留め、連れ去った。僕は姫を妃とし、僕を初代皇帝とする帝国を築いた。 幾年か後、姫を連れてあの城に戻ってみた。朽ち果てた城…

まったく嫌んなっちゃうな

ああ、まったく嫌んなっちゃうな、誰彼問わずどうにでもなれと思っちゃうよなこんな日に、なんで僕は徒党を組んでたむろしているのか、こんな日差しの中を。僕の頭の中に仕掛けられた時限爆弾を破裂させてメタモルフォーゼさせたいんだ、君に送るために木っ…

新しい空間

目に見えている青色の空が裂けて紅色の空間が入り込んできた。紅色の空間からは見たこともない異様な存在が湧いて出て、僕達を食べだした。僕達は皆で一斉に彼らを倒し始めたのだけれど、倒しても倒しても彼らは紅色の空間から生まれ出て、一人また一人と僕…

世界を壊す僕の果て

僕達の世界を手放すことに異論のあるものは多かった。祖先が築きあげた砂上の楼閣全てを手放す事に納得出来ない者がいるのは当然だろうし、またその先を見たいと願う気持ちも解らなくはない。けれど僕達の世界そのものが病巣であり、全てをチャラにして一か…