てりり◎物語、梗概集

てりり◎物語、梗概集

筋、道理。重層世界の諸要素。ナラトロジー

まろやかにホイップ

なんだかぼやっと思っているうちに靴墨が塗られてピカピカになった僕のカバンから豆腐とタワシと牡丹と車がドカッと出てきて、ぺしゃんこにしてしまいたい欲望を抱いた僕は、くるりと輪を書いた烏口コンパスの中心のポッチが気になって気になって、塞いでしまいたいという欲望にかられてもう否応なくどうしようもなくとめどなく溢れでてくる涙を掬って豆腐に一匙かけました。すると氷に入った珈琲の塊がとろけるような苦味ばしったいい男に向かってパクリと交錯するや否や、ズザザー、ズザザー、と嘆くのです。マカリヤ空輪車が滑らかな弧を描く時、それは唐突に落下し地中へと旅を始めるのだけれども、そもそもそれが何なのかというところに至っては、皆目検討もつかないどころか、あまつさえくるりと輪を書いたなまこがドッドド云々と気取りやがって、そのせいでみいんなワッと騒ぎ出したと思ったら、
「おーい、まだ狐はいらんかえ、いらんのかえ、なあ」
などと言われてしまう。困ったもんだと腕組みしながら、角砂糖の入ったオイルボトルと共に飛翔し千年荒野へと馳せ参じました。
「おーい、納豆や、納豆売りや、売らんかえ、売らんのかえ、なあ」
言われてしまう。
まいったね。こりゃまたまったくまいったたまげた、トビが油揚げ攫った時には、コトリと狐狗狸が輪を回し、
「いよーい、ほーれ、ほい、こっちゃこー、こっちゃこー」
ともなるのでありました。

さて、額賀大福、口上一番、今日が昨日か昨日が今日か、おいそれと渡りだしたるこの橋の端をツツーと滑った転んだひっくり返ったくるりと鳶が輪を書いた、だから
「おんもらえ、えい、えいやさ、ほい、ほれ」
そうなのだ。そう、そうだったのだよ、もう、穿つ穴に泣かれても、おいそれとししおどし。ぬかるみに嵌って、あとは一巻の終わりと相成りました。
だけど嫌だよ、そんなの嫌だ。終わらせやなんかしないのだ。むず痒い小虫にささくれ立たされたといえ、南蛮渡来のこの膏薬に、なんと不思議な煙か霧か、
「はいはい、因果なものでござんすねぇ、おとど何時いつ知らぬれば、不意の病にござりんす、えぇ」
ぬ、かっとなった童は、スササー、ズササー、と小躍りしながらえんやこらどっこいしょ、餅ついてぺったん、歩いてはんなり、輪る角には福来る、と来たもんだ。あ、それえっさかほい、ほっさかえい、
「みみん、みんみみん、口惜しや…」
「まあそう泣くな、詮ないことゆえ、諦めなぇ、」
桃太郎金太郎鬼に金棒犬猿雉、まさかり担いだトーテムポール、蒟蒻問答埴輪の行水、荒野に泣いたルクシオン、そう、須らく世はこともなく。

駐屯地。あるいて戻る駐屯地。駐屯地。
今夜はワニだ、駐屯地。
白いから、白いのだ。
網膜きたした高粱落伍。パイルとメンデスのハンバーグドリアにめめくらげを一匙たらしてさっと煮込んだトロトロスープに、みりん、オイル、さらにオイル、そしてオイルとオイリーなオイルをお入れになって、ぬめりをたっぷりトロトロたっぷり宝だアキラだ金だ砂鉄だドドメ色なのに大大大大大爆発だと狂って踊って弱って死んだ。はてさてみりんだ、オイルオイル。もうそこで帰れる道は無し、もうこれで帰る道も無し。

逆鉾に逆巻く逆立ち逆三角形は、天からい出ましふんぞり返ってペコラは四角、四角は豆腐。
「納豆、納豆よう、おい、納豆、食いもんがねえんだ、おれぁ納豆よう、お前を食っちまいたいんだよ、だからなあ、頼むよ、一粒だけ、一粒だけでいいんだ、たった一粒だけでいいんだったら、ほら、ほーらほらほらもう一粒ほら、はいほらもう一粒、もうもう一粒だけでいいんだ、一粒たべたら、あと一粒だけでいいんだ、ああ、一粒だ一粒だ、ああ一粒一粒、一粒だ、ああ、ああ、ああ、なんてこったい、おれぁすっかり平らげちまった……、ごめんよう、ごめんよう、食っちまったよお前をよう、なあ、納豆、納豆納得う、納得してくれてんだよな、なぁ、えぇ、蛍ぅ、なぁおい一粒よぅい、たった一粒残らず食べちまったよ俺は、おーいおい、おーいおいおい」
泣けど喚けどぬかるみは縮まらず、とめどなく溢れる瞳。落下傘が氷を掬って、シャリシャリと食べましたよ。ええ、はい、食べました。だからと言ってももうそれは、戻す事ができません。否、戻す事はできますが、それは戻ったことにはなりません。大変残念です。アカシックレコードになる予定です。すすり泣き。散弾銃。一般家庭の桃太郎。特大造りの金太郎。さて、まるきり陶酔してしまっている彼のおじいさんはプラダの下駄でカラコロ行くと、縁既払いでチントンシャン。トチチリチレツンテツレッツーンーテンっと来たから麩の端から、ソーイ、ソーイと呼ぶ声がする。狼が来たぞー、と声がする。なぶるか、否か。鞣すか、否か。まんじりともしない夜が明けて、布団の匂いはもう、すっかり消えていた。

棒道を、修羅を、見事見事、お見事見事。善きかな善きかな、ほれほれほいほいほいほい ほいほい ほいほ…い……
(完)