てりり◎物語、梗概集

てりり◎物語、梗概集

筋、道理。重層世界の諸要素。ナラトロジー

王の墓

 王の城にたどり着いた僕達一行は、姫を妃に貰い受ける旨王に宣告し、籠に乗せて走り去った。泣き叫び飛び降りようとする姫を引き留め、連れ去った。僕は姫を妃とし、僕を初代皇帝とする帝国を築いた。
 幾年か後、姫を連れてあの城に戻ってみた。朽ち果てた城。一人娘を奪われ、諸列強と渡り合う力も無く朽ちた王国の残骸。泣きたいだけ泣かせてやり、姫を解き放つ。姫は走りだす。ゆっくりとついていくとそこには王の墓。喉首を突き、事切れた姫の血に染まる王の墓。これが見たかったのだ。なんともほろ苦い甘さ。苦くも甘美なとろける光景よ。この光景をみるために、僕は苦労を重ねてきたのだ。今やっと果実は熟し、僕の喉を潤す。この報酬の甘さの為なら、どれだけの悪逆非道を費やしても惜しくない。いやむしろ、これからこそよりその為に力を注ぐ事を厭わなくなるだろう。
 僕はこれからも各地を平定し、帝国は栄え続ける。僕の命の尽きるまで。