てりり◎物語、梗概集

てりり◎物語、梗概集

筋、道理。重層世界の諸要素。ナラトロジー

花は咲くだろう

 少年がさまよって力を手に入れて破壊活動に従事した挙句、幼い日に大切に思っていた子を手にかけてしまい、自分自身に絶望し嗚咽を漏らしながら滝から身を投げる。そういう事ってあるよね。僕の知っている人の中にも、そういう種類の人間の屑が幾人もいて、彼らは総じてゴミ虫のような人生を送っている。彼らには人間として生きる上で最低限必要な要素が全然全く無いので、人間としては生きられない。欠落したカタワ。実は僕もそう。人間並の価値の無い、ゴミ虫以下のクソ虫なんだ。そんな僕は流動食を胃に送り込まれている祖父と一緒に暮らして、看護師さんに祖父の痰を取ってもらう作業をいつまでもいつまでも飽きること無く眺めていたりするのだけれど、そんな僕にだってほんのかすかな人間らしさくらいあるさ。祖父の喉を詰まらせて、早く楽にしてあげる事とかね。それができたら苦労しないんだけど、残念ながらこの病院の職員は、僕が祖父を清らかで安らかな天国へ送ってあげようとすることを否応無く阻害してくる。忌々しい毒虫どもだ。僕は憤慨し、彼らに処罰を与える。命を奪ってあげたっていいんだけれども、蹴りを入れて急所を潰したり、不意に攻撃して怯んだ所を谷底へ突き落としたり、色々とできることはあるはずなのに何故かできなかったりして、でもそれはある程度限られていることだから、対したことじゃない。その気になればいつだって刃物で刺し殺せるものね。だから僕は安心して、彼らの家族を先に始末しに行くんだ。妻子。特に弱い立場の人間を排除してやる事で、やつらは己の無力さを知るのだ。落伍者へと転落した自分の運命を呪わせてやろう。その運命を与えてやるのは、僕だ。
 僕の手の中で戦慄く小虫がジタバタと鬱陶しいので首を切り血抜きして切り刻んで壷に入れて味噌に漬けた。いつかきっと花は咲くだろう。