てりり◎物語、梗概集

てりり◎物語、梗概集

筋、道理。重層世界の諸要素。ナラトロジー

尊び


誰も何も解らないし察知する事もできない、人の命の価値と他者の価値との釣り合いが取れない、生きる意味もわからない。誰にも何も解らないし尊ばれる価値など無い
居た堪れない気持ち、行く手を遮る男を八つ裂きにして狂い、泣きたい、泣きたい、どうしようもなく崩れ落ちて灰になりたい
人の心の有り様を泣きながら眺めていたいのだけれど静かに狂った先にあるのは死のみで報われる事はまるで無く、朗らかに死ねたらいいのになって、いつまでも死が救いなのだからちゃんと死なせて欲しい
希求された魂のほつれにうろたえて日々の灯りに閉ざされて、影へ、虚ろへと待避してゆく
侵食された世界の中で答えは最初からあるもののみ、貫いて、足掻いて喚いて、ただそれだけで、もう全て絶えてしまった
泥濘に浸されて死んでいく、纏わり付いた生暖かさに祝福され、実感を伴った死を迎える
尊ばれ、望まれ、輝ける、健やかな死
幸福の最中、歓喜の歌が聞こえる
因果から開放された残された人々の楽園、死後の世界、それが現世
現世こそが死後の世界で、そこで人々はただ、借り物の生を、生きる