てりり◎物語、梗概集

てりり◎物語、梗概集

筋、道理。重層世界の諸要素。ナラトロジー

帰還

乳白色の欅に樅の木を加え、落葉の砂漠に一匙の水を与えよう。
泣くな子供たち、お前たちもすぐに還れる。永遠(とわ)に、永久(とこしえ)に。

群がる氷蜘蛛を焼いて回る。一匹残らず始末し終え、その灰を深く深く、誰にも手の届かない所に埋葬する。まるで宝物を隠すかのように。それは有ってはならない禁断の果実を、誰の手にも届かない高みに供物するのに似ている。畏れ多く、敬いつつ、行うべき事だ。

砂丘の先の小鳥の宿で、僕達は最後の安息を得る。さあ、ここからが本当の仕事。力を齎す法則の欠片を、くるりと廻りながら、振りまく。さあこれで、僕達の仕事はお終い。子供たちよ、泣いていいんだよ、これでやっと終息できるのだ。生という病に終りを告げて、死の幸福へと還れるのだ。

生きてしなければならなかった役割を終える事が出来た事。本来の自分たちの在るべき死へと還れる事。二重の喜びに包まれて、僕達は静かに息絶える。音もなく、静かに、息絶える。水音すら無く、羽音すら無く、月明かりの音さえも無く、息、絶える。