幸いなことに僕の家は全焼し尽くし誰一人生き残る事は無かったのだった、僕を除いて。 僕はいつも一人で裏山の空き地に佇みしげしげと星空を眺めたりしながらうたた寝したりして、そんな僕にはちょうどいい過ごしやすい気候の夜だったのだけれど、生憎家は火…

第一章 雪の中に横たわる人を発見した時、僕は何を思い出したのかというと、それはただもう死んでいるに違いないということであって、それは同時にそこにいるのがもう生きている存在などではなくて、「死体」なのだろうということであって、それはつまり「物…

僕のうちには卵があって、それが僕のぬかるみを淀んだ泡沫の淡い琥珀に目くじらたててよりそった。「ねえ、もう、いいですよう、って言ってごらんよう」 そう言って、僕の姉さんとその友達のあの人が、おいでおいでして笑ってる。僕はまだそこに辿りつけない…

なんだかぼやっと思っているうちに靴墨が塗られてピカピカになった僕のカバンから豆腐とタワシと牡丹と車がドカッと出てきて、ぺしゃんこにしてしまいたい欲望を抱いた僕は、くるりと輪を書いた烏口コンパスの中心のポッチが気になって気になって、塞いでし…

暖気が宙空をすり抜けて僕は凍えていく揺れる旗、揺れる気分、揺れる世界波打つ暖気はすり抜けて僕は凍えていく撫でる夢、撫でる空、撫でる息車が全て轢いて潰してくれた浮かぶ暖気、沈んでいく僕の体あこがれを空に眺めながら揺れていく、絶えていく振動が…

カック カック カックカクケキカクケコン……カック カック カックカクケキコケケカン……クケック カー！ カー！クケック コッケキー！ ……キキッカッ ……カッケンコケケクーカーカーカッ ……カッキュンクキコケー…… コッケケー コッケケッコッキー……キキリクケコ…

歌詞「一二三四で六尺褌」出演者：少年、少年の弟（幼児）、割烹着の母編成：歌手（男女×各一名）、弦楽器群（バイオリン×4、ヴィオラ×2、チェロ×2、コントラバス×1）必要な小道具、舞台：和室、六尺褌、旭日旗、等夢：男女がベルカント唱法（クラウス・ノミ…

からくりを持ってからくりを制す、人の力では敵わないからくりに会ってからりと晴らす、嘘の力では敵わない無明無明とゆくあてど無くも歩けど歩けど道は無く無明無明と泣き叫べども応え無くぬか床の世界回れ廻れ周れ囘れ舞われれば周り見るけれど飽きもせず …

しちゃっ としちゃっ としちゃっ としちゃっ としちゃっ としちゃっ としちゃっ としちゃっ とぬるま湯に、ああぬるいけど、この世に大切な、ひよこの子ああそんな夜でも朝でも昼でも着たきりスズメにゃ嫁やれぬ宇宙の、果てから、こんにちはなぜしちゃっ と…

暗いクリオネ、玄倉伊豆ね、廻る世界と五臓六腑、鋭く尖った獲物を片手に「待て！」放たれたのは矢、一拍子の世界「狩れ！」放たれた追手、五拍子の、七拍子の、急病死の、世界狂おしく「なお」叫ぶ、悶える、しがみつきねぶりかき乱す、爪を立て「はい！」…

拮抗する。体力の有るものと無いものとか、拮抗する。知恵と勇気で拮抗する。体力のあるものは、バカだ。生きていても仕方のない人間のクズだ。しかし、体力があるから、勝ってしまった。クズが世界を制するのだ。だから世界はこんなにも愚かしさに溢れてい…

パンと紅茶とレモンティー。紅茶をすすりながらレモンティーを飲もう。パンは無くていいんだ。むしろ無いほうがいい。おにぎりがあれば。紅茶をすすりながらレモンティーを飲もう。レモンは無くてもいいんだ。むしろ無いほうがいい。おにぎりがあれば。おに…

乳白色の欅に樅の木を加え、落葉の砂漠に一匙の水を与えよう。泣くな子供たち、お前たちもすぐに還れる。永遠（とわ）に、永久（とこしえ）に。群がる氷蜘蛛を焼いて回る。一匹残らず始末し終え、その灰を深く深く、誰にも手の届かない所に埋葬する。まるで…

丸くなった猫を膝に抱えて、僕は君が死んでいくのを見守っている、楽しい、夢見る、なでらかな朝口に含んだ砂糖水をわずかづつ飲み込んでいくと、微睡みの中笑う月が浮かぶまだら状の穏やかな染みがふわふわと舞って降りる木造の小部屋に泣く間くらい与えて…

繊細で優しい感受性の高い少年。彼は信じているだけなのだ。人の心を。そんな彼を、手を触れただけで壊れてしまいそうな彼を、慈しみ、大切に守ろうとする者がいる。そんな彼を、凍った花弁を握り潰すように、じっくりと、壊していくことに、悦楽を感じる者…

美の使徒。美しい意識、美しい所作、美しい官能。抜けるように白い肌。透ける青いドレスと、透明な濡れた瞳。美そのものと言える少女。美しいものであればどんなもににでも微笑みかけ、手に取り、愛でる。たとえそれが、穢れた美しさであろうとも。

さて、そんな彼の前に現れたのが、悪の申し子、黒雲重蔵（くろくも・じゅうぞう）。強請り、脅し、殺しに強姦、悪いことならなんでもござれの好き放題。そして被害者の弱みを握って、有無を言わさず関係を継続させ、奉仕させ続ける。どこまでも自分に依存さ…

無意識のうちに悪を倒してしまう、天性の狩人、正義の申し子、白鳥一羽（しらとり・かずは）。彼は自らの意志とは関係なく、悪に気づいた瞬間にはもう既に倒してしまっているという天賦の才を持つ。しかし、それは自らの望む事では決して無い。彼は生まれつ…

りきりきりくる、くりきるくくるりくるりく、くるくりくりきりきりくる、くりきるくくるり、くるり、りん、りりんから、らけれくるるく、るけれくるから、らけれけるるく、るころ、くるりきりきりくる、くりきるくくるりくるりく、くるくりくりきりきりくる…

俺は男だ、ヒゲ男。強いヒゲ、たくましいヒゲ、屈強なヒゲを持つ男。そんな俺は、悪を退治する。殺人犯を殺す！ 強盗犯を殺す！ 万引き犯を殺す！ 赤信号を渡った小学生は殺す！正義の男。ヒゲ男。ヒゲは正義か！？ 正義はヒゲだ！！俺こそ正義だ！！ヒゲは…

俺は男だ、モミアゲ男。強いモミアゲ、たくましいモミアゲ、屈強なモミアゲを持つ男。そんな俺は、悪を退治する。誘拐犯を殺す！ 窃盗犯を殺す！ 恐喝者を殺す！ 駐車違反した運転者は殺す！正義の男。モミアゲ男。モミアゲは正義か！？ モミアゲは正義だ！…

未来の事が書いてある手紙。「君たちは忘れてるかもしれないから書きます。あなたの妹は、明日の◯◯時に心臓の鼓動が止まって亡くなります。それまでの貴重な時間、大切に過ごしてください」「なにこれ」、妹も一緒に見るけど、冗談だと二人とも本気にしない…

皇居は変形し巨大なロボットになった！！その主座には天皇陛下、陛下を支える副座に皇后陛下、スタンバイOK皇太子殿下、今だ、いくぞ、超巨大ロボット！陛下の大御心を反映した太陽の如き大いなるロボットは、民草の思いを原動力に動く！みんなの思いが力と…

黒猫のミカは、お兄さんを見ていた。「なーお」鳴いてしまった。だってお腹が空いているから。腹ペコで、腹ペコリンコでペコペコで、ペコペコリンコで、なーお、なのだ。「なーに、どうしたの？ 愛が欲しいの？」そう言ってお兄さんはミカをギュッてする。ギ…

地面を掘ったら地球の裏側まで突き抜けてしまった！！そこはハワイだった！！！！ハワイの陽気な風が流れこんできて、ハワイアンミュージックが聴こえてくる。いいな、ハワイ。いいぞ、ハワイ。常夏の天国。だからハワイ。そしてハワイ。ハワイ良いとこ一度…

俺は孤独な英雄。悪の科学者に無理矢理改造された昆虫のような体と、その気になれば巨大化できる力と、巨大なからくり人形を遠隔操作機器で操作したり、搭乗したり、空を飛んだり、夜の高層建築物の壁に張り付いたり飛び跳ねたり、小道具満載の車や七つ道具…

電子レンジの中に閉じ込められた！！出して！！ 叫んでも出してくれない。押しても開かない、密室だ！このままじゃ俺は、死んでしまう！ 密室殺人だ！密室殺人は回避されなければならない！！誰かの手が、レンジを操作する。まずい！！ レンジで、なんか仕組…

コーラが、死んだ。何故だ！ 何故なんだ！あんないいやつが、甘くてスカッとした、爽やかで、黒い、あいつが……。俺があいつを殺した犯人を見つけ出してやる！俺は、探した！ そして、見つけた！ああ、なんてこった、あの気のいいコーラを殺した奴が、ことも…

男は、岩だった。ハードで、ボイルドな、岩だった。硬いぞ。「俺を殴れ！！」男は殴られるに任せていた。殴られる度、悲鳴が聞こえた。「痛い」「痛い」「いたたたた」「ああ」「もうだめ」殴った奴らの拳は砕けた！ ざまあみろ！！痛みに耐えて頑張れず、奴…